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病と闘う夫婦の記録「明治発熱ー受胎ー」

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明治時代を力強く生きた夫婦の一代記 今回はエブリスタで完結中の 「明治発熱ー受胎ー」 を紹介させていただきます。 本作は元伯爵令嬢のこう子という女性と和菓子屋の店主鷹雄の愛の物語であり、と同時に 病への偏見と闘う家族の物語でもあります。 皮膚が変色・変質し、やがて身体中が魚の鱗のようになってしまう鯉青、通称ウロ(ウロコ)という病気にこう子は罹患します。架空の病気ではありますがその病気に対する国家政策や偏見は実在したある病気をモデルにされています。 その病気に罹患したが最後、全身を黒い鱗に覆われ、血を吐いて死ぬという恐ろしい病。皮膚が変質してしまうことと死にざまがおぞましいことから、恐らくはウロは移りやすい病気とされ、国家的に隔離政策が施されます。 ウロの患者は、それが露呈してしまえば強制的に隔離され、一生施設のなかで過ごさなければいけません。 変な性癖を持つ夫と恥じらう元華族の妻の、反対を押し切ってまで手に入れた仲睦まじい生活に、その病気はヒタヒタと足音を立てて忍び寄り、やがて罹患した妻と何もできぬ夫を哀しみに突き落としてしまいます。 瑠璃子という謎の女性とのやりとりやお得意先への納品などに忙しい夫を気遣い、病気の進行を隠すこう子の健気さが涙を誘います。 ネタバレになるので多くはいえませんが、こう子を救ったのは夫である鷹雄の愛そのものであったと思います。 号泣必至の長編をぜひご覧くださいませ。 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気ブログランキング にほんブログ村

あなたの価値観を根底から揺るがすSF大作「ピーリング」

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画像: エブリスタ 化粧品メーカー勤務の冴えない研究者が、 一匹の実験動物と出会ったことで波乱に巻き込まれていく―― 命とはなにか考えさせられる作品です あらすじ   化粧品会社で地味な研究をしていた企業研究者だった主人公。ある一匹の実験動物との出会いがきっかけで、研究仲間を巻き込み世紀の大発見をする。それはガンを治す夢の薬の発見だったが、若返りという本来とは異なる使い方をする人が爆発的に増えてしまう。 開発者の主人公は利益をむさぼろうとする会社を相手に裁判で闘うが、大好きな人を苦しめ、非難の的にしてしまうーーそして、夢の薬の恐るべき真実に気づいたとき、物語は加速する。 一介の冴えない研究者だった主人公が、注目を浴び、それがゆえに闘い、色々なものを失いながらも成長していきます。やがて米国大統領とも知り合いに…… 「ハルヤ。考えてくれたか」 「はい、大統領」  みつきさんの手をぎゅっと握りしめた。 「僕は……、決行を望みます」 この最終章も近いという場面、主人公が背負ったものの大きさを考えると涙が出ます。 おススメポイント   理系の私も読んでいて臨場感を感じられる世界観や設定で、新薬ができるまでの過程や権利関係のややこしい争いなどを主人公目線で体験することができます。 一方、個性的なキャラクターも魅力で、視点が変わることもしばしばあり、恋愛関係にヤキモキしたり……(淡い恋模様にも必見です!) しかし、最終章に近づくにつれて物語は重くなります。どちらにしろ失うものの大きい決断を強いられ、主人公が突きつけられた選択肢はあまりにも過酷で辛いものだったでしょう。その決断に対応するように、愛する人とのたわいもない日常の描写が重いストーリーを際立たせます。 世界の禁忌とも呼ぶべきものに近づいてしまった科学者の壮絶な一代記をご覧あれ! 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気 ブログランキング にほんブログ村

天気を読み解くもう1つの視点「微粒子が気候を変える」

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画像: アマゾン 天気の見方が変わる一冊です この本と出合ったきっかけ 私がこの本と出会ったのは、他学部の先生から薦められたことがきっかけでした。 望んで入ったはずの学部で、物理学への興味が薄れていくときに出会った「船の上で海を学ぼう2018」というプロジェクトの参加メンバーからその先生のことを聞き、会いに行ったのです。 その先生は大気のエーロゾルを調べていらっしゃる方でした。 海にでたり学部の棟の屋上で観測をされているとのことでした。 室内でこもるより外に出て実験や観測をしたかった私にとって、この先生の下で研究を行うことこそ、自分が求めていることだったような気がして胸が高まりました。 どうやったら私の今いる学部から先生のいる大学院にいけるかを、図々しくも初見で聞いたりしました。 そうして薦められたのがこの本だったというわけです。 絶版が惜しいと思う 正直、先生がここを読んどくといいよとおっしゃった章以外も、どの章も面白く勉強になりました。 気象予報士試験を受けたことがあり一応天気に関する知識は持っていたつもりだったのですが、目からうろこのことが沢山書かれていました。 アルベド(地球の、太陽光源からの光の全波長に対する反射率のようなもの)に関して大気中を漂う非力なはずの微粒子が関与することは薄々わかっていましたが、その微粒子は太陽の光を反射する一方温室効果もあり加温と冷却の二つの面があることは、改めて言ってもらわないと認識できなかったことです。 地球という大きな対象に、生物起源の微粒子が大きく関与していることも驚きでした。 オゾンホールの発見などの歴史も述べられており、とっても勉強になりました。 出版社からの本はもう出されていないのがとても惜しいと思います。 理系でなくても持っておいていいと思う 小さな存在がこうも地球の大気のなかで役割を演じているさまはある意味痛快でもあります。一方、大気・地球という系は単純な方程式では解き明かせないということもわかります。 大気汚染や地球温暖化など、私たちの暮らしに暗い影を落としている諸問題への正しい知見を深めるためにも、この本はもっと評価されてしかるべきだと思います。 春瀬由衣 サ

人ならざるものとの交流「天ノ狗」

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引用  アマゾン 小説投稿サイトエブリスタから書籍化した「天ノ狗(アメノキツネ)」をご紹介します! この物語はローファンタジーに該当すると思います。設定は現実世界にはないものですが、舞台は現代で、身元不明の子どもと実家が神社の大学生が主な登場人物です。 大きなる星、東より西に流る。 すなはち音ありて雷(いかづち)に似たり。 時の人の曰く、流星(よばいぼし)の音なりと。 また曰く、地(つち)の音なりと。 ここに、僧旻天が曰く、流星にあらず、地の雷にもあらず、 これは天ノ狗なり。 その吠ゆる声、雷に似たるなりと。  日本書紀 神話の一節を序章の前に位置させた意図が、最初はわかりません。 神社を実家に持つ女子大生マキが、祖父の知り合いの葬儀に出席したとき、昔に会った少年を知ります。 少年は日にあたることを異常に嫌がります。そして少年の後見という男性の橘が、少年を守るように監視下に置き続けます。――少年リョウはその橘をどこか恐れているようで……? 妙に靄がかった記憶、そしていつもとは違う思考に誘導されるマキにハラハラする一方、謎の〝黒づくめ〟の正体も気になって?? リョウの正体、リョウを狙う本当の敵に驚きます! 自然現象の描写もすさまじく、〝黒づくめ〟の目的に驚きつつ、 最終的な結末にどこかほっとする。 そんな作品です! いつもと違った日常を見てみたい方はぜひ! エブリスタからの気鋭の新人、芳納 珪さんのデビュー作をご紹介しました! 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気ブログランキング にほんブログ村