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奔放な天才肌二人の才能を世に出した少年の成長記「長崎の竹蜻蛉は誰よりも天高く」

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画像: 長崎の竹蜻蛉は誰よりも天高く|Amazon 少年ゆえの無鉄砲さが、激動の時代にあるべき生き方を模索していく 実在する人物が主人公 堀江鍬次郎という今の伊勢にあたる安濃津領から長崎に遊学に来た少年と、長崎の”問題児”こと上野彦馬の二人の友情の物語。鍬次郎の方は武士であり、「国の領主さまの役に立つ」ために長崎へと出港する。一方彦馬の方は武士ではない出自で、自由で天才肌ゆえに、世の不条理にも気づきやすい性格をしています。 お家のために蘭学を学べと口うるさい家族に反発し、自分の興味に従い 舎密学(今の化学)を追求しようとします。一方真面目臭い鍬次郎はというと、真面目で努力家であり細かいことにも気を配れる男でありながら、どこか彦馬と似た気風の領主、 藤堂高猷に惹かれ憧れています。 モチーフの使い方がうまい そんな鍬次郎と彦馬は 最初はことあるごとに対立 します。鍬次郎が古里から持ってきた(くすねてきた?)大事な父親の小刀を「長崎の鬼」である彦馬が奪い、そのことが鍬次郎にばれたときには鍬次郎は大層怒りました。 一方彦馬はといえば、 舎密学から知識を得て「 湿板写真」の現像に伝習所の講義をすっぽかして取り組んでおり、そのために牛の脳が必要ということで牛の頭を切り過ぎて(それほどエグイ描写はないはずなので大丈夫) 大事な鍬次郎の刀を刃毀れのボロボロに してしまっておりました。 しかし、鍬次郎は鍬次郎で奇しくも 彦馬と同じ写真術に興味が沸き 、世間の情勢から蘭学か兵器学を学ぶ人間が多いなか 舎密学に没頭していきます。 小刀というモチーフは、二人の別れのときに、女好きで鍬次郎の手を焼かせた彦馬の不器用な優しさを描いてもおり、全編通じて意味を成す小道具でした(ちょっぴりホロリとなります)。 そして題名にもある「竹とんぼ」。努力家で才能もある鍬次郎ですが、 舎密学に没頭しすぎて遊んでいる(?)のに試験の成績だけはめっぽういい天才肌の彦馬に触れるにつれ、「 彦馬の才能を世に出す 」ことに力を割くようになります。 飽きっぽい彦馬のために写真の準備と片付けを行い…… 彦馬のお母さんかよ ……(笑) そして後に長崎伝習所の教本にもなったという「 舎密局必携」という本を協力して書...

バディ小説大賞受賞の実力を見よ!「―空― 戦国あやかし恋華」

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画像: ー空ー戦国あやかし恋華|Amazon 天台宗の僧侶と神獣の牛「塩竈」が、美しい少女に秘められた悲しい陰謀を暴く キャラがたっており誰かを必ず好きになる 名高き神獣の子でありながら、神力で大きな仕事ができるわけでもなく、物に宿ったいわゆる「残留思念」のようなものを読みとることしかできないことを気に病むのは塩竈(しおがま)という名の牛である。 金槌ゆえ水の中を泳ぐことはできず、生に無頓着な相棒の僧侶:空穏(くおん)を心配するという役回り。 一方空穏はといえば、神獣を救ったことと引き換えに「病の根源が見える力」を授かり指圧で行く先々の病人を癒す旅人。般若心経の空即是色色即是空をよく引用し、人の人生をあってないような「空」であるとして自己犠牲をためらわない。 ここに書いたすべての要素が、クライマックスの感動に繋がる のは流石と言わざるをえません。ちなみに私は塩竈くん派です。 塩竈「ブモォ?」←起こしてしまったごめんね(笑) 予想外の黒幕とその動機が胸に迫る 湖に浮かぶ奇妙な怪異とそこから生まれた真っ白な少女を巡る謎を解き明かすというスタンスの本作、戦乱の時代ゆえの過酷な生活も描かれており、リアリティが胸に迫ります。 戦争などで夫を亡くした未亡人に慈悲を以て接する尼僧、患者の振りをして僧侶である空穏を誘惑する女、そのすべてが真相に深くかかわります。 主人公らに真摯に協力してきたあの人がまさか――!という衝撃、そしてその動機の切なさや。 怪異というものを扱う以上、王道の歴史小説とは言えないのでしょう。しかし、その分キャラ設定と物語で魅せてくるのは圧巻!子どもを持つ母親の皆さんは、恐らく 主人公サイドと敵サイドの両方に感情移入してしまう のではないでしょうか。 和風ゆるふわファンタジー、しかしちょっぴりミステリ要素もあり。そんな枠にはまらない「バディ小説」を、ぜひご覧ください!! サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気ブログランキング にほんブログ村

青臭い思春期を青春と呼ぶのだろう「セパレイトブルー~青春水泳群像~」

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Follow @separate_blue15 作品URLはこちら [link:セパレイトブルー~青春水泳群像~] エロとサボりがお友達()の自称水泳部員の本気を見よ 実力がありながら水泳部の練習に全く参加してこなかった主人公駿と腐れ縁たちが、プールに戻る決意をしたのは、天野という美女が水泳部に入部してきたからだった。 不純極まりない動機でしか動かない坂東駿だったが、天野に意味深な反応をさせた田宮誠一というスイマーに完敗してから漢に目覚め、鬼監督とともに厳しい練習に明け暮れる。 青臭すぎてしょーもない、けれど誰もが一度は体験したはずの青春がここにあります! 男子の羨望の的のヒロイン、マズくて汚い(坂東談)行きつけのラーメン屋など、青春群像の王道を踏みながらのオリジナリティ溢れるストーリー 本当に男子高校生の脳みそのなかってこんなんなんだろうなって笑っちゃうこと必至(笑) 個人的には真面目系天然のナタリーがお気に入りです。 笑いあり涙ありのエブリスタ青春群像の金字塔を、ぜひこの機会にご覧あれ! 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気ブログランキング にほんブログ村

ほのぼの日常に癒される「少女「……」ウェルカム」

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画像: 少女「……」ウェルカム/エブリスタ とにかくかわいい。少女がかわいい。 今回ご紹介するのは、ほのぼの系台本形式の連作短編です。 その名も 「少女「……」ウェルカム」 登場人物はカフェを営む「店主」、可愛い女の子の「少女」、カフェに来る客の「男性客」、女の子に目がなくちょっと危険な(笑)「女性客」など一般名詞の人々です。 あ、店主の腐れ縁の「友人」忘れてましたw カフェの手伝いをする少女(しょうちゃん、とかおちびちゃん、とか呼ばれてるらしい)は基本無口で、顔でなにかを訴えるのですが、長い付き合いの店主がいちいち解読して説明してくれます(´ω`*) あと腐れ縁の友人はカフェの倉庫(?)を自分の物置き場みたいに使っており(どんな関係なんだ(笑))得体のしれないものが倉庫からでてきて事件(といっても微笑ましいもの)に発展したりします(ノ∀`♥) 女性客は基本社畜なのか疲れ果てており、少女への癒しを求めて来店しますが、少女への愛がおおきすぎるあまりよくポリスを呼ばれます。端的にいうとロリコン? とにもかくにも、どこかの路地裏に、あなたの家の近所にあるかもしれない儲かってなさそうなカフェで、店主とその仲間たちがドタバタとにかく楽しそうなのです。 何も考えずにとりあえず笑ってほのぼのして友人が格闘ゲームでボロ負けするのを読んでいたいって方にとてもおすすめです('ω') 三 ( ε: ) 三 (. .) 三 ( :з ) 三 ('ω') 三 ( ε: ) 三 (. .) 三 。・*・:≡(    ε:) 頭を空っぽにして、どこかにあるかもしれないカフェのお話をお楽しみください(ง •̀ω•́)ง✧ 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気ブログランキング にほんブログ村

魔女の前世を持つ女子大生の復讐「Witch Of Psychopath」

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画像: Witch Of Psychopath/エブリスタ 〝暗黒の渦〟に囚われた弟子を助けに行く師弟愛が泣ける 今回ご紹介するのは、伝説の魔女エルフィナの生まれ変わりの女子大生の復讐譚です。 題名は 「Witch Of Psychopath」 大学進学後にヤリサーに捕まってしまい、来る日も来る日も性行為を強要される自堕落な生活を送っていた凛星という女性と、彼女を救う魔法使いの銀行員のお話です。 凛星は銀行員の三上に弟子入りし、魔法を覚えていきます。しかし、彼女の前世は強大な力を持った大魔女エルフィナでした。 エルフィナの残したとされる書物や、エルフィナの記憶を手に入れたい組織が凛星を狙うようになり、事態は深刻になっていきます。そしてとうとう凛星の復讐心が途方もなく膨れ上がり、ヤリサーのメンバーに次々と復讐をしていきます。そしてついに、強大な魔女エルフィナの魂が凛星の身体を乗っ取ってしまい……? ところで作中世界では、魔法使いは復讐などに心を奪われすぎると「暗黒の渦」に囚われてしまい心をなくしてしまいます。凛星ももまた、その渦に囚われてしまいました。そんな凛星を師匠である三上が決死の覚悟で救い出すシーンは圧巻です。師弟愛というのでしょうか? 途中残酷な描写も多くあり苦手な方は苦手かもしてませんが、これも好きな人には刺さる作品です!ぜひご覧ください\\٩( 'ω' )و /// 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気ブログランキング にほんブログ村

世のタブーに切り込む視点「化け物の消息」

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画像: 化け物の消息/エブリスタ 処女を食らう化け物を巡る女性たちの憎愛 今回ご紹介するのは、処女を食らう大蛇の姿の化け物と人々の関わりを、様々な時代を舞台に描く歴史ファンタジーです。 題名は 「化け物の消息」 処女を食らう化け物は古代から現代まで変わらず存在しているとされ、身体は固く銃弾も効かず、ターゲットになった女性を守るべく戦った男性たちは無残にも敗れ去り、 愛する人が化け物に食べられるのを見守るしかありません 。 一方、愛し合った二人のうちの、男性側が処女と信じていた女性が、なぜか化け物に食われなかったら……?  「喰われるも地獄、喰われぬも地獄」 という作者の狭山直人さんのキャッチコピーはまさに作品を表すにぴったりで、食われなかった女性たちの「処女ではなかった」という事実もまた彼女たちを苦しめます。 また、作者の視点は鋭く、 話題になった時事問題をいち早く取り入れる ことでも知られています。最近更新された章では、医科大学が女性と浪人生の点数を一律減点した問題を取り上げていました。 フィクションながら風刺のきいた作風には賛否両論あるとは思いますが、好きな人は好きに違いない! 毎回〝化け物の消息は、ようとして知れない〟で締まる 章の終わりに病みつきになります。 恐らく作者がなんらかの理由で筆を折ってしまうまで続くであろう短編連作です。 ぜひいまから読んでおくことをお勧めします! 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気ブログランキング にほんブログ村

ーー人間しか愛せないーー神の言葉の真意に震えろ「狐王は龍の娘を離さない―玉翠国物語―【完結】」

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画像: 狐王は龍の娘を離さない―玉翠国物語―【完結】 愛を知らない神を癒したのは、災いをもたらすという 驪竜 ( りりょう ) だった―― 本ブログで三回目の特集になります、城月りりあ先生のウェブ小説です 今までのポストはこちら↓ 耽美な束縛愛に身を投げろ「愛に飼われて 騎士団長と奴隷姫」 美しい神と生贄の少女の物語「龍の神に捧げられた私―碧禮国物語―」 題名は「 狐王は龍の娘を離さない―玉翠国物語―【完結】 」 美しい世界観と流麗な文章が魅力の「りゅうかみシリーズ」の第2編、第1編に相当する 「龍の神に捧げられた私―碧禮国物語―」 よりも、少し時代が下った時期の話になり、ネタバレには注意してください(今作だけでも十分たのしめます) まずは第1編の世界観のおさらいです! 科学が進みすぎたことにより世界の大半を人類は破壊してしまい、神に供物をささげることで加護を得るという古代さながらの生活を人類が強いられてしまう、もしかしたらあるかもしれない未来が舞台になっています。 前作は供物として捧げられた女の子と龍神のお話でしたが、今回は 狐王の白葉と龍神 驪珀 ( りはく ) の娘である 驪明 ( れいめい ) が主人公 になっています。 四つに分かたれた神の世界のうちの一つを治める王であった白葉は、隣国から黒い髪の龍神・ 驪明が来るのを楽しみにしていました。口を開く度に白葉に結婚を迫るも、あっさりと白葉は撃沈させてしまいます。それでもどこか居心地がよく、姪っ子と叔父さんみたいな距離感で頻繁に会う二人。 一途な 驪明が片思いから脱することができずコロコロと白葉の手のひらで転がされる物語かと思いきや……。 白葉がふとした隙にみせる底なしの暗い目が読者としては気になるところ 。 一方驪明は災いをもたらすとされる驪竜として、どこか後ろ指をさされるような生活を抱えています。そんな驪明は、白葉のとある秘密を知ってしまい……? 白葉と驪明の間には様々な苦難が横たわり、とうとう驪明は驪竜として覚醒してしまいます(色々すっ飛ばしましたが読んで確かめて!) 二人の愛は苦難を乗り越えられるのか?はたまた二人はどうなってしまうのか?それももちろ...

カメラマンと被写体のサディスティックな束縛愛「私は彼の所有物」

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作品ページ: 私は彼の所有物 リアルな筆致でアンリアルを描く天才 今回ご紹介するのは、エブリスタで投稿されている 「私は彼の所有物」 という小説です。 例に漏れず、かつての私の書いたレビューを掲載します。(春瀬由衣の前の前のペンネームは”たぬき”でしたw) 遅くなりました、この度はイベントに参加くださりありがとうございます。 リアル、がテーマのイベントでしたが、この作品は女性をただの被写体としてしか見ていないような写真家と、被写体であり続けるために理不尽に耐える女性の奇妙な関係を、その奇妙さにも関わらず説得力ある文章で綴ってあります。 私自身はこのような恋愛はやりたくはないのですが、しかし「その感覚、わかるなあ」と唸らされる場面も多くありました。 被写体であり続けることでしか想い人の側に居られないという女性側の悲壮な決意が報われることを願わずにはいられません。(バッドエンドならすみません) たぬき 初めてこの作品の作者の筆に触れたきっかけになったのは、小説投稿サイトエブリスタ内でのユーザーイベントだったように思います。レビューにあるように、 「リアル」をテーマ にした作品を募集し、集まった作品のうちの1つが「私は彼の所有物」だったのでしょう。 この作品は、インスタグラムを用い有名になった藤井ケイという若手写真家と、彼があくまで被写体として寵愛する専属(?)モデルのお話。彼が撮るのはいつも顔を映さない同一人物の裸体の写真だけ。主人公には「お前の裸を美しく撮れるのは自分だけ」と豪語し、モデルの名前を一切公表せず巷の話題をかっさらいます。 なんという❝普通じゃない❞物語なんだと息を飲まれた人もいるかもしれませんが、ちょっと待った。アンリアルを、リアルな筆致で書いた小説と言ったことをお忘れでしょうか? 昼ご飯はおにぎり一個で収めなきゃいけないほどのシビアな体重管理を要求し、人遣いが荒く、いい写真のためなら主人公を手荒に扱うことも辞さない男に、なぜ主人公はついていくのか。――それは❝割のいい仕事だから❞だけじゃありません。 惚れた弱み――主人公はそういいます。 主人公は、藤井ケイの写真と彼自身に惚れています 。 主人公の好きな人 ( 藤井ケイ ) は、あくまで裸体を撮るためのモ...

美しい神と生贄の少女の物語「龍の神に捧げられた私―碧禮国物語―」

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画像: 龍の神に捧げられた私―碧禮国物語― 美しい世界観、もちろんストーリーにも魅力たっぷりの作品  今回ご紹介するのは、 こちら の記事で紹介した書籍化作家城月りりあ先生の初執筆作です。 題名は「 龍の神に捧げられた私―碧禮国物語― 」 まずは私の書いたレビューを紹介します。(当時私のペンネームは春瀬たぬきでしたw) まだ少ししか読んでないのですが、レビュー失礼します。 この物語は、歴史風ファンタジーと見せかけて 「未来」の話 であることがキーポイントであると感じます。 科学技術が発達しすぎて身を滅ぼし、古代の生活に逆戻りした人類……。E=mc^2から原子爆弾が生まれたように、人類は得た知見を破壊に使いがちです。軍事と科学はきっても切れない関係であり、どうしても発展の影には犠牲が存在します。 往々にして薄っぺらいファンタジーになりがちな世界観を、説得力あるものにしているのがこの「未来」の設定であると感じました。 その設定の妙の上に、さらに 風景が浮かぶ丁寧な描写 で、これは読み進めるのが楽しみです。 素敵な作品をありがとうございます。 春瀬たぬき かつての私も言う通り、この作品の第一の魅力は世界観にあります。 神に生贄を捧げその代わりに庇護を得るという、まるで古代さながらの生活様式を保たざるを得なくなった人類。しかしその舞台は、現代よりもずっと遠くの未来だといいます。 三つ目で大型の、現代には存在しないケモノが存在するなど、世界観はファンタジーです。しかし前述したように設定はSFというべきでしょうか。 そしてキャラクターもとても魅力的。人間嫌いの神である驪珀は、生贄と引き換えに担当する地区への庇護を与えていますが、生贄はケモノに食べられるのを眺めてそのまま帰ってくるなど、とても冷酷な性格をしています。そんな驪珀が、初めて❝お持ち帰り❞したのが主人公である漓朱でした。 人間嫌いを自他ともに認める驪珀が生贄の人間を持ち帰ったことに、彼の居城は大騒ぎ。 そして驪珀は、嫌いなはずの人間に心乱されることに戸惑い、自分の心にあえて背を向けるように漓朱を痛めつけ、あるいは急に優しくしたりします。 何者も信用しないという風な驪珀の言動に、非力な人間であるにもかかわらず...

病と闘う夫婦の記録「明治発熱ー受胎ー」

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明治時代を力強く生きた夫婦の一代記 今回はエブリスタで完結中の 「明治発熱ー受胎ー」 を紹介させていただきます。 本作は元伯爵令嬢のこう子という女性と和菓子屋の店主鷹雄の愛の物語であり、と同時に 病への偏見と闘う家族の物語でもあります。 皮膚が変色・変質し、やがて身体中が魚の鱗のようになってしまう鯉青、通称ウロ(ウロコ)という病気にこう子は罹患します。架空の病気ではありますがその病気に対する国家政策や偏見は実在したある病気をモデルにされています。 その病気に罹患したが最後、全身を黒い鱗に覆われ、血を吐いて死ぬという恐ろしい病。皮膚が変質してしまうことと死にざまがおぞましいことから、恐らくはウロは移りやすい病気とされ、国家的に隔離政策が施されます。 ウロの患者は、それが露呈してしまえば強制的に隔離され、一生施設のなかで過ごさなければいけません。 変な性癖を持つ夫と恥じらう元華族の妻の、反対を押し切ってまで手に入れた仲睦まじい生活に、その病気はヒタヒタと足音を立てて忍び寄り、やがて罹患した妻と何もできぬ夫を哀しみに突き落としてしまいます。 瑠璃子という謎の女性とのやりとりやお得意先への納品などに忙しい夫を気遣い、病気の進行を隠すこう子の健気さが涙を誘います。 ネタバレになるので多くはいえませんが、こう子を救ったのは夫である鷹雄の愛そのものであったと思います。 号泣必至の長編をぜひご覧くださいませ。 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気ブログランキング にほんブログ村

あなたの価値観を根底から揺るがすSF大作「ピーリング」

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画像: エブリスタ 化粧品メーカー勤務の冴えない研究者が、 一匹の実験動物と出会ったことで波乱に巻き込まれていく―― 命とはなにか考えさせられる作品です あらすじ   化粧品会社で地味な研究をしていた企業研究者だった主人公。ある一匹の実験動物との出会いがきっかけで、研究仲間を巻き込み世紀の大発見をする。それはガンを治す夢の薬の発見だったが、若返りという本来とは異なる使い方をする人が爆発的に増えてしまう。 開発者の主人公は利益をむさぼろうとする会社を相手に裁判で闘うが、大好きな人を苦しめ、非難の的にしてしまうーーそして、夢の薬の恐るべき真実に気づいたとき、物語は加速する。 一介の冴えない研究者だった主人公が、注目を浴び、それがゆえに闘い、色々なものを失いながらも成長していきます。やがて米国大統領とも知り合いに…… 「ハルヤ。考えてくれたか」 「はい、大統領」  みつきさんの手をぎゅっと握りしめた。 「僕は……、決行を望みます」 この最終章も近いという場面、主人公が背負ったものの大きさを考えると涙が出ます。 おススメポイント   理系の私も読んでいて臨場感を感じられる世界観や設定で、新薬ができるまでの過程や権利関係のややこしい争いなどを主人公目線で体験することができます。 一方、個性的なキャラクターも魅力で、視点が変わることもしばしばあり、恋愛関係にヤキモキしたり……(淡い恋模様にも必見です!) しかし、最終章に近づくにつれて物語は重くなります。どちらにしろ失うものの大きい決断を強いられ、主人公が突きつけられた選択肢はあまりにも過酷で辛いものだったでしょう。その決断に対応するように、愛する人とのたわいもない日常の描写が重いストーリーを際立たせます。 世界の禁忌とも呼ぶべきものに近づいてしまった科学者の壮絶な一代記をご覧あれ! 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気 ブログランキング にほんブログ村

人ならざるものとの交流「天ノ狗」

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引用  アマゾン 小説投稿サイトエブリスタから書籍化した「天ノ狗(アメノキツネ)」をご紹介します! この物語はローファンタジーに該当すると思います。設定は現実世界にはないものですが、舞台は現代で、身元不明の子どもと実家が神社の大学生が主な登場人物です。 大きなる星、東より西に流る。 すなはち音ありて雷(いかづち)に似たり。 時の人の曰く、流星(よばいぼし)の音なりと。 また曰く、地(つち)の音なりと。 ここに、僧旻天が曰く、流星にあらず、地の雷にもあらず、 これは天ノ狗なり。 その吠ゆる声、雷に似たるなりと。  日本書紀 神話の一節を序章の前に位置させた意図が、最初はわかりません。 神社を実家に持つ女子大生マキが、祖父の知り合いの葬儀に出席したとき、昔に会った少年を知ります。 少年は日にあたることを異常に嫌がります。そして少年の後見という男性の橘が、少年を守るように監視下に置き続けます。――少年リョウはその橘をどこか恐れているようで……? 妙に靄がかった記憶、そしていつもとは違う思考に誘導されるマキにハラハラする一方、謎の〝黒づくめ〟の正体も気になって?? リョウの正体、リョウを狙う本当の敵に驚きます! 自然現象の描写もすさまじく、〝黒づくめ〟の目的に驚きつつ、 最終的な結末にどこかほっとする。 そんな作品です! いつもと違った日常を見てみたい方はぜひ! エブリスタからの気鋭の新人、芳納 珪さんのデビュー作をご紹介しました! 春瀬由衣 サイト訪問者の皆さまへ ブログランキング参加中です。下のリンクをぽちっと投票お願いします(๑•̀ㅁ•́ฅ✧ 人気ブログランキング にほんブログ村

耽美な束縛愛に身を投げろ「愛に飼われて 騎士団長と奴隷姫」

originally posted in 2018-7-24 城月りりあさん[ @ RiriaShirotsuki   ]のデビュー作、「愛に飼われて 騎士団長と奴隷姫」のレビューです。 小説投稿サイトエブリスタの「 エブリスタ小説大賞2017 ティアラ文庫&オパール文庫 オトナのラブストーリー大賞 」を受賞した本作。 ファンタジー世界における甘々の恋愛モノで才能を発揮されている城月りりあさんのデビュー作となった本作も、とっても甘い情事の描写があります。 ええ、未成年にはもったいなくて見せたくないほどに(`・ω・´)←え しかし、この作品の第一の魅力は謎に満ちた登場人物であると私は思います。 記憶を喪失したまま奴隷商人の手から逃れるべく走るオフィーリア、王族に表れる青い瞳を持つ騎士のルーク、王位継承権を争う二人の王子。 情熱的な愛の言葉に、見え隠れする互いの苦悩と葛藤。 そしてハッピーエンドの際には、全ての謎が収束し見事の一言でした。 甘々マイスターと勝手に呼ばせていただきます!←無許可 皆さんもぜひ書店などでお買い求めください~ 春瀬由衣

――月に導かれ、彼らは忘れていく「月の輝く夜、僕は君を探してる」

originally posted in 2018-6-28 柊永太著、月の輝く夜、僕は君を探してるの書評です。 そして、今年の全国ビブリオバトルで私がプレゼンしようと思っている本です!!!! エブリスタで仲良くして頂いていた柊さんが書籍化したときはとっても嬉しかった一方、自分も頑張らなきゃとライバル心がメラメラしました(笑) さて、本題です。 一見ただの青春群像劇……? 晦人(かいと)と朔奈(さくな)、他の仲間たちとたわいもない話をして歩く日常。そんななか各人の誕生日を聞こうという流れになり、晦人は仲良し組の誕生日を聴いていく。 ――その刹那、気づかず道路に出てしまっていた朔奈が、トラックに呑まれた。晦人はほのかに思いを寄せる相手の誕生日だけ聞けぬまま、永遠の別れを迫られて……? 晦人はしばらく学校を休んでしまいます。仲良し組も各々心に重いモノを抱えながら過ごしますが、冬休みが終わると校舎内に幽霊が出るという噂がます。 そこからというもの、一気にジャンルが「青春」から「ミステリー」に。 星と記憶 幽霊は朔奈でした。しかし、朔奈は不思議な行動律に支配されあるランダムな時間帯に彼女は記憶を失い晦人たちも彼女に会えません。 決定的だったのは、あれほど仲のよかった仲良し組たちが順番に「 朔奈の記憶をすっぽりと失います 」 晦人に残された想い人の記憶のタイムリミットは?記憶が失われる意味は?表紙の彼女が月を抱いているのはどうして?? 占星術や惑星の運行に詳しい&興味がある人は、とっても楽しんで読めると思います。もちろん私のように知らない人も!! 今年全力でお薦めしたい小説の1つです。 皆さん、買わないと損ですよ! 春瀬由衣

コンビニ店員と客の物語「コンビニ物語~カウントダウンシガレット~」

originally posted in  2018-03-07 エブリスタ発短編集「5分後に涙のラスト」2作目レビューです 【おすすめポイント】 なんでもないコンビニ店員が、ある客の不思議なタバコの買い方に気づくところから物語は始まる。 一日経る度に一つ数字の小さいタバコを注文するその老人が30番を頼んだころに、店員は客の異変に気付く。 面白いタバコの買い方をする客という認識からだんだんと思い入れが強くなり、主人公はカウントダウンを心の中で応援するようになる。しかし客の異変に気づいてからは、その時間帯は苦痛になってきて…… 一番のタバコを渡す日が永遠にこなければいいのにと思う一作。 エブリスタ内での短編新人賞「妄想コンテスト」入賞作からさらに珠玉の作品を集めた「5分シリーズ」は、河出書房から続々刊行中。 春瀬由衣

変わっていく過去と現在に違和感なく引き込まれる「不変のディザイア」

originally posted in  2018-03-05 エブリスタ作家の短編集「5分シリーズ」内の感動の一作 【おすすめポイント】 過去の自分にメールが送れるアプリを主人公が使うところから話は始まる。やや半信半疑ながらも、目の前の悲劇をなんとしても避けるべく一年前の自分にあの手この手で愛する人との交際を諦めさせようとする。 メールを過去の自分が見たことによる過去の変化は、現在の自分の記憶に”付け加えられ”ていく。メールを送るたび過去は変わり、主人公はそれを認識しては落ち込む。どうやっても悲劇は避けられないのか……? 「ああまた記憶が上書きされた」というスタンスから「ああそういうこともあったな」に変わっていく過程に違和感がない。そして”付け加えられた”記憶を確かに”思い出す”たびに、変えた過去には幸せが付加されていく。 悲劇は、ある意味避けられなかった。しかし、アプリは死にゆく主人公に一筋の希望を与える。 手の込んだプロットに感服。涙活したい人におすすめかも。 エブリスタ内での短編新人賞「妄想コンテスト」入賞作からさらに珠玉の作品を集めた「5分シリーズ」は、河出書房から続々刊行中。 春瀬由衣

ー善と悪、破滅と復興ー「ソウルトランサー」

originally posted in 2018-3-2 エブリスタ発、魂交換者たちの生きざまを描く 【おすすめポイント】 廃墟となったテーマパークで、人格が入れ替わる謎の現象が起こる。重罪を犯した犯罪者に与えられるクライムレベル上位のハッカーを捕らえるはずが彼女と”ソウルトランス”されてしまった特対の青年は、深層を暴くべく地下深くの扉へ向かう。テーマパークの復活を願う美少女ハッカーと忌むべき思い出からそれを憎む特対の関係性は、トランスで変わっていく。 とりかえばや物語に始まる男女交代の手法で、善と悪を描いたアサスペンス。ハッカーには犯罪を犯したという自覚はなく、廃墟にも人間の命はある。ソウルトランスされて魂の脱獄を果した闇の帝王はかつての教官。バトルは息を呑むリアリティ、何回も裏切られるどんでん返しと伏線回収は見事! 初めてweb発の小説を買ったのがこの小説でした。 スリリングなアクションが好きな人におすすめかな。 徳間文庫 冒険エンターテインメント小説賞大賞受賞作を是非。 春瀬由衣