カメラマンと被写体のサディスティックな束縛愛「私は彼の所有物」




作品ページ:私は彼の所有物

リアルな筆致でアンリアルを描く天才




今回ご紹介するのは、エブリスタで投稿されている「私は彼の所有物」という小説です。

例に漏れず、かつての私の書いたレビューを掲載します。(春瀬由衣の前の前のペンネームは”たぬき”でしたw)

遅くなりました、この度はイベントに参加くださりありがとうございます。
リアル、がテーマのイベントでしたが、この作品は女性をただの被写体としてしか見ていないような写真家と、被写体であり続けるために理不尽に耐える女性の奇妙な関係を、その奇妙さにも関わらず説得力ある文章で綴ってあります。
私自身はこのような恋愛はやりたくはないのですが、しかし「その感覚、わかるなあ」と唸らされる場面も多くありました。
被写体であり続けることでしか想い人の側に居られないという女性側の悲壮な決意が報われることを願わずにはいられません。(バッドエンドならすみません)

たぬき
初めてこの作品の作者の筆に触れたきっかけになったのは、小説投稿サイトエブリスタ内でのユーザーイベントだったように思います。レビューにあるように、「リアル」をテーマにした作品を募集し、集まった作品のうちの1つが「私は彼の所有物」だったのでしょう。

この作品は、インスタグラムを用い有名になった藤井ケイという若手写真家と、彼があくまで被写体として寵愛する専属(?)モデルのお話。彼が撮るのはいつも顔を映さない同一人物の裸体の写真だけ。主人公には「お前の裸を美しく撮れるのは自分だけ」と豪語し、モデルの名前を一切公表せず巷の話題をかっさらいます。

なんという❝普通じゃない❞物語なんだと息を飲まれた人もいるかもしれませんが、ちょっと待った。アンリアルを、リアルな筆致で書いた小説と言ったことをお忘れでしょうか?

昼ご飯はおにぎり一個で収めなきゃいけないほどのシビアな体重管理を要求し、人遣いが荒く、いい写真のためなら主人公を手荒に扱うことも辞さない男に、なぜ主人公はついていくのか。――それは❝割のいい仕事だから❞だけじゃありません。

惚れた弱み――主人公はそういいます。主人公は、藤井ケイの写真と彼自身に惚れています

主人公の好きな人 藤井ケイ は、あくまで裸体を撮るためのモデルとして主人公を愛し、主人公はそれに応えようとする……好きだからこそ、ビジネスライクな関係から踏み込めずずるずると奇妙な関係を続けます。

そんな主人公が、初めて、支配者である藤井ケイに逆らい、口答えするシーンは緊迫感が半端ないです!「あああ、言っちゃった……」とため息をつくこと必至。そしてそこからの展開はとても意外で、とてもエロい。

誰かをたまらなく好きになったことのある人なら、この❝普通じゃない❞恋愛にもリアルを感じるはず。


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