世のタブーに切り込む視点「化け物の消息」

画像:化け物の消息/エブリスタ

処女を食らう化け物を巡る女性たちの憎愛



今回ご紹介するのは、処女を食らう大蛇の姿の化け物と人々の関わりを、様々な時代を舞台に描く歴史ファンタジーです。


処女を食らう化け物は古代から現代まで変わらず存在しているとされ、身体は固く銃弾も効かず、ターゲットになった女性を守るべく戦った男性たちは無残にも敗れ去り、愛する人が化け物に食べられるのを見守るしかありません

一方、愛し合った二人のうちの、男性側が処女と信じていた女性が、なぜか化け物に食われなかったら……? 「喰われるも地獄、喰われぬも地獄」という作者の狭山直人さんのキャッチコピーはまさに作品を表すにぴったりで、食われなかった女性たちの「処女ではなかった」という事実もまた彼女たちを苦しめます。

また、作者の視点は鋭く、話題になった時事問題をいち早く取り入れることでも知られています。最近更新された章では、医科大学が女性と浪人生の点数を一律減点した問題を取り上げていました。

フィクションながら風刺のきいた作風には賛否両論あるとは思いますが、好きな人は好きに違いない! 毎回〝化け物の消息は、ようとして知れない〟で締まる章の終わりに病みつきになります。

恐らく作者がなんらかの理由で筆を折ってしまうまで続くであろう短編連作です。ぜひいまから読んでおくことをお勧めします!

春瀬由衣

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