病と闘う夫婦の記録「明治発熱ー受胎ー」



明治時代を力強く生きた夫婦の一代記

今回はエブリスタで完結中の「明治発熱ー受胎ー」を紹介させていただきます。

本作は元伯爵令嬢のこう子という女性と和菓子屋の店主鷹雄の愛の物語であり、と同時に
病への偏見と闘う家族の物語でもあります。

皮膚が変色・変質し、やがて身体中が魚の鱗のようになってしまう鯉青、通称ウロ(ウロコ)という病気にこう子は罹患します。架空の病気ではありますがその病気に対する国家政策や偏見は実在したある病気をモデルにされています。

その病気に罹患したが最後、全身を黒い鱗に覆われ、血を吐いて死ぬという恐ろしい病。皮膚が変質してしまうことと死にざまがおぞましいことから、恐らくはウロは移りやすい病気とされ、国家的に隔離政策が施されます。

ウロの患者は、それが露呈してしまえば強制的に隔離され、一生施設のなかで過ごさなければいけません。

変な性癖を持つ夫と恥じらう元華族の妻の、反対を押し切ってまで手に入れた仲睦まじい生活に、その病気はヒタヒタと足音を立てて忍び寄り、やがて罹患した妻と何もできぬ夫を哀しみに突き落としてしまいます。

瑠璃子という謎の女性とのやりとりやお得意先への納品などに忙しい夫を気遣い、病気の進行を隠すこう子の健気さが涙を誘います。

ネタバレになるので多くはいえませんが、こう子を救ったのは夫である鷹雄の愛そのものであったと思います。

号泣必至の長編をぜひご覧くださいませ。

春瀬由衣

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