よくも悪くも、何もかもが正反対の友軍ーエイティシックスEp.5 死よ、驕るなかれー

読了後、表紙の配置が秀逸だと感じた今作。

表紙はこちら


引用:アマゾン

虐げられる者と迫害する者の2元論が、それを主導していた共和国の崩壊とそれに伴うエイティシックスの解放から、単純化されることなくより入り組んでくる。それを表すような表紙の構造になってます。


世界で唯一の専制君主国家となった、ロア=グレギア連合王国が、今作の舞台。前作で主人公シンエイが<聴いた>、主を失ってなお暴走するレギオンの開発者と思われる声を探し、連合王国と共同作戦をとる。

王国側の代表としてシンエイらと相まみえたのは、王位継承権を剥奪された異能を持つ王子。そして彼が率いる部隊は――

シンエイが王都で、死者の脳構造を取り込んだレギオンの声を聞く。それはあまりにも自分たちに近すぎてシンは戸惑う。そんな戸惑いを見透かしたように、王子は告げる。

これは人造妖精<シリン>であると。

ある意味、共和制として自由と平等を標榜する共和国がエイティシックスという<人ならざるもの>を作りだしたよりは人道的なのかもしれない。専制君主制という自由には遠いように思える王都では、人種を表す様々な色彩の者たちが一見平和的に交流していた。

この国では兵役を担う者が臣民、納税義務を負う者が隷民という区別がある。負うものの違いだけだと王子は笑う。人を人ならざるものと断じた共和国より人道的に思える。

しかし、シリンの正体にシンたちすら怖気だつ。嫌悪感すら露わにするエイティシックスすらいた。

シリンらは、死者の脳構造を取り込んだ、戦闘に特化された被造物。

死が定められた戦場でそれでも戦い抜くことを誇りとしたエイティシックスは、それでも人間であった。シリンは既に死んだ者であって、使い捨てられることをむしろ誇りとも捉えている。ある意味似ており、ある意味正反対。

フレデリカが言う。自分たちの存在について考えるためには、エイティシックスにとってこの出会いは重要なものであるだろう、と。

あらすじを述べましたが、実際はもっと濃い濃い物語なのです!私ごときの話術では伝えきれなひ(´;ω;`)

そしてアンジュ推しの方は色々な意味でハラハラするに違いない……戦地のなかで孤立してイチャイチャすな!(Ep.5唯一のほっこりパート、なのかな???)

えっと、作者サンはやはり死神なのでは??私も大概登場人物を酷い目に遭わせると(多分)有名な人なのですが、安里アサト先生はその5階上をいってますね。

レギオンの攻勢、あるいはそれ以外の要因で別たれてしまった人類の、表面上敷居が取り払われたあとにいつまでも続く精神的断絶、わかりあえない悲しみまで書いてるからなあ……

ハッピーエンドってなくない??←

あまりの重い展開に疲れたら、カクヨムというサイトでライトな番外編も書かれているそうなのでぜひ……

作者……作者……

さあ、見ている皆さんも買うのじゃ!!!

春瀬由衣

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