異世界転移が嫌いな人にこそ読んでほしい!「獣医さんのお仕事in異世界」
画像:いらすとや
今日はアルファポリス文庫の「獣医さんのお仕事in異世界」をご紹介します。
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物語は、例のごとく主人公が異世界に召喚されることから始まります。
しかし、彼自身のいわゆる「こちら側」での生活の描写がまったくないわけではありません。
公務員獣医、という、「獣医の地味担当」と主人公自身がいうような、家畜などの衛生を管理する――ときには行政の立場から全頭殺処分を命じなければならないような、そんな職業についている主人公。
明確に言及されるわけではありませんが、主人公には苦い過去があると考えられます。作中で頻繁に、殺してしまう命以上の命を救ってやる、と主人公が言う場面があるからです。
そして主人公自身、異世界で無双できるわけではありません。
召喚された異世界では、過去に四人の「こちら側」の人間を召喚し異世界側の問題を解決させてきた歴史があります。
彼らにとっての異世界、すなわち「こちら側」の人間は「マレビト」と呼ばれ、中世ほどの文明しかもっていない異世界においては豊富な知識を持つマレビトは度々国同士の均衡を崩しかねないファクターとして振る舞ってきました。
歴代のマレビトは戦術やドラゴンを手なずける技で異世界に大きな功績を残しましたが、その背後では国同士の利権が絡みます。
大国の均衡を揺るがしかねないマレビトである主人公は、むやみやたらに素性を明かすわけにもいかず、身をやつして行動する場面もあります。
一方で、戦争で名を立てたマレビトは人を救う英雄として持ち上げられますがその背後では人が死んでいます。
獣医という職業の主人公は、歴代のマレビトのようには振る舞えません。力が強いわけでも、戦術に優れているわけでもなく、ただ一人の人間として異世界に相対する存在です。
是が非でも「英雄」になってもらわなければいけない背後の思惑があり、武術に優れた歴代のマレビトと比べ獣医の主人公のマレビトとしての素質を疑問視する視線も見え隠れします。
主人公は獣医としての知識を技量で、異世界の人間たちの信頼を一から獲得しなければなりません。もちろん異世界を歩む上での理解者はいますが、十分ではありません。
精緻な獣医の仕事の描写や異世界の風習なども魅力ですが、私は「俺TUEEEEじゃない主人公の苦悩」がこの物語一番の見どころだと感じました。
ぜひご購入の上感想を聞かせてください!!
春瀬由衣
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