断絶は、繰り返す「86-エイティシックス-Ep.4 」

originally posted in 2018-8-30
86シリーズの最新刊、Ep.4の書評です。 以下ネタバレが含まれますのでご注意ください。

引用:アマゾン

★。o○o。。o○o。。o○o。。o○o。。o○o。。o○o。。o○o。★ 共和国人のレーナとエイティシックスのシンは、連邦で再会する。彼らの共闘は、共和国北部の地下にあった。 

今作で特徴的なのは、連邦によってレギオンから〝救われた〟立場の共和国臨時政府のなかで、ある勢力が台頭していること。

 エイティシックスを正しく運用すれば十分に勝機はあったとし、〝有人式無人機〟のプロフェッサーであるエイティシックスをモノとして、連邦側に返還を求める。

 有色人種だけを戦場に追いやり、自分たちはのうのうと平和を享受しただけではなく、いざ大攻勢のときには戦わずに散っていった、アルバと呼ばれる白人たち。彼らは連邦による保護下に置かれてもなお、エイティシックスを豚扱いするのに余念がない。

どの面下げて、と憤るかと思えば、シンたちエイティシックスは意にも介さず日常を送る。 強いのではなく、弱いところを擦り落とされることでしか生きてこれなかったという言葉が重い。

エイティシックスらも、白人たちのことを〝白ブタ〟と蔑んでいる。お互いに、相手を人間を思ってはいない。 共和国のアルバが作りだした壁は、エイティシックス側からも強固に補強されている。

同じ人種のアルバたちの横暴や傲慢に憤り、自分の罪のように思うレーナは、シンの「レーナは別だ」という言葉に、アネットというシンの幼なじみはシンの記憶のなかに自分がいないことに、謝罪する機会すら与えられずに苦しむことになる。

バトルの描写も、相変わらず汗を握りますが、「人間同士の断絶」ということが注意深く描かれていると感じました。 この世界観が好きでたまらない私としては、5巻が楽しみで仕方がありません。

いまからでもこのディストピアに、戦いに酔いしれてください。

春瀬由衣



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